マルコフ確率場(マルコフネットワークまたは無向グラフィカルモデル)は、
変数に対応するノード集合とノード対を接続する無向リンク集合からなります。
条件付き独立性
無向グラフは有向グラフのようなhead-to-headのような分かりにくい現象は発生しません。
無向グラフにおいてつのノード集合で次の条件付き独立性が成り立つか考えます。
集合に含まれるノードの少なくともつを通るなら、式が成り立ちます。
以下の図1は式が成り立つ例です。
図1
無向グラフにおけるマルコフブランケットは、以下の図のようになります。
図2
分解特性
つのリンクによって接続されないつのノードの同時分布は、以下の式で表せます。
式が成り立つためには、が同じ因子ならないように因数分解される必要があります。クリークという概念を導入します。
クリークの定義は、すべてのノードの組にリンクが存在するようなグラフの部分集合です。
すなわち、クリークの全ノードは全結合です。
極大クリークは、もうつのノードを加えるとクリークでなくなってしまうようなクリークのことです。
以下の図を用いて、クリークについて具体的に説明します。
図3
このグラフは
ノードから成るつのクリーク
および、ノードから成るつ極大クリーク
を持ちます。
クリークをと書き、クリーク内の変数集合をと書きます。
このとき、同時分布はグラフの極大クリーク上のポテンシャル関数の積で、次のように書けます。
ここで、は規格化定数(分散関数と呼ぶこともあります)で、以下の式で与えられます。
ここでポテンシャル関数はさえ満たせばよいことに注意が必要です。
ポテンシャル関数は、指数関数で表現すると便利です。
ここで、はエネルギー関数と呼ばれ、この指数関数表現はボルツマン分布と呼ばれます。
有向グラフとの関係
図4
図の(a)の有向グラフの同時分布は、以下のように表されます。
図の(b)の無向グラフの同時分布は、極大クリークは単なる隣接ノード対であるので、以下のように表されます。
式より、以下のような対応付けができます。
なお、このときポテンシャル関数が全て確率関数に対応しているのでであることに注意が必要です。
図5
図5の(a)の有向グラフの同時分布は、以下のように書けます。
因子はつの変数を持つので、
この条件付き分布をつのクリークポテンシャル関数に吸収させるためには
これらの変数がつのクリークに属していなければなりません。
つまりノードの親同士をリンクで接続すればよいです。(図5の(b))
この「親同士を結婚させる」ことをモラル化といい、結果として得られる無向グラフをモラルグラフといいます。
以上をまとめると、一般に有向グラフを無向グラフに変換するには以下のようにすればよいです。
まず、グラフの各ノードに対してそのすべての親同士の対に無向リンクを付加し、
さらにもともとのリンクから矢印の方向性を取り除いてモラルグラフを作ります。
次に、モラルグラフのすべてのクリークポテンシャル関数をに初期化します。
そして、もともとの有向グラフの条件付き分布因子をつずつ取ってきて、それぞれ対応するクリークポテンシャルのつに掛けます。
有向グラフから無向グラフへの変換では、有向グラフの持つ条件付き独立性の一部が捨てられます。
モラル化とは、リンクの追加を最小限に抑えることによって条件付き独立性をできる限り残す方法です。
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